遺品回収で、再び仙涯嶺へ

最近は、ご主人はじめ、山岳会有志や事故当日同行の皆様のご尽力もあり、
いまは非公開だが、重厚なリポートも作成され、その報告会にも参加させていただいている。

今回の事故から、山岳アクティビティにおいて、
いわゆるカテゴリーを越えたとき、または、知らない者同士の登山における場合もふくめた
ハザードというものについて、簡潔にシェアさせていただこうと、行動をしている最中である。

まずは、月末に開催される9TH美ヶ原トレイルランの前日開催される、選手ミーティングでやるべく、
いま準備中だ。

さて、昨日、再びソロで仙涯嶺をおとずれた。
今回は、自分なりに直接・間接的にあつめた情報と、先日の現場訪問の経験、そしていままでの
自分の登山経験からの、判断と覚悟をもち、西田由香里の遺留品回収登山へ。

FACEBOOKには直接は書いてない。
無用かもしれないが、ご遺族はじめ様々な方の気持ちを配慮した。

しかしここでは私なりの記事を書ける範囲で書きたいと思う。
レポートに触れてない方々には少々ショッキングな内容かもしれないが、どうかご理解いただきたい。

結果だ。
2,600~2,500m(*訂正)のケサ沢の支流(墜ちた沢で、ケサ沢に合流する手前)で、遺品をつぎつぎに発見する。
CCA(山岳会)のT.Hさんなど、これを時期はちがえど沢登りですでにやってくれていて、
こればかりは雪融けその他要因があるのでタイミングだ。
さらに、座標軸をある程度しぼれたのも、Hさんの情報があってこそ。

雪融けのタイミングと、シュルンド(雪渓が融けて穴があく)への落下物、雨雪風そして、
日々ときに激しく移りゆく自然変化など、遺品回収は困難ということを、様々な先達からうけていた。

まさに、干し草のなかから針をさがす様なものだと。

例えば、今回シュルンドに深くおちた遺留品があったとして、それは確実に見落とすのだが、だったら雪融けを
待ってまた見つかることもあるかもしれないし、沢に流されてどんどん散り散りになることもあるだろう。
重いものは深く深く沈んでいくし、反面、軽いものは浮いてくるそうだ。

だから今回は幸運だと、はじめに岩場の陰のスノーシュー、ついで急斜面の雪渓でストックを発見したとき思ったものだ。

白いスノーシュー、ピッケル、ストック、ヘッデン、リーシュコード、
そして、わたしも2012か2013年に購入する際に同行していた、グリベルの12本爪アイゼン。

じつは、決して簡単ではない、厳冬期1DAY常念岳をいっしょに達成したときに、はじめて使ったアイゼンだ。

アイゼンミス、もしくは誤って草つきの雪面を踏み抜いたすえに滑落したとされる、
右足に履いてたであろうアイゼンは、なんだかずしりと重かった。

錆びた爪、衝撃で切れたのか、もしくはレスキューの際にカットされたのか、堅牢なはずの黒いアッパーバンド。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二つ合わせて丁寧に岩に挟まっていたアイゼンを発見したとき、

そうか……と、勝手ながらここがあの終焉の地だとおもった。

落差8mはあろう滝下から10ⅿほどの地点。
ヘリで救助にきていただいたレスキューの方たちのコトも思いつつ、感謝の念がしょうじる。

手を合わせ、さらに下降した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところで、今回の登山を自己評価すると、55点くらいか。

前述した情報から、またこの日しか6月はチャンスがなかったので、
”スピード”を重視し、その結果、重くてかさばる補助ロープを、断腸のおもいで装備から外した。
沢をくだっていく計画なので、とても時間がかかることは知っている。

それゆえに、ザックがあるかもしれないケサ沢への合流区間を回避せざるをえなかった。
足場も悪い上、落差がおおきい滝でさすがに無謀であったから。


※共有している自作の簡易作成マップ

もちろん、さらに地図に載らない小さな滝はあまた存在するし、
NGなら、登り返す、というマイルールはたしかに最後まであったけど、
細かなとこでチャレンジの連続であった。

不謹慎かもしれないけど、自分の運動能力+判断力ふくめた経験を発揮するべく、我武者羅にやった。

そして、人は1mでも死ぬ”ことを意識しつつすすんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

山で迷った者が不安感を持ちながらどんどん下っていき、滝にでくわして滑落することはよくあることだが、
今回の能動的な沢くだりは、心理的状況がかなりちがうもの。
情報と実際の誤謬こそあったが、一つひとつ冷静にこなせたことは良しとしようか。

岩場、雪渓をやり過ごしたあとは、沢足袋に履き替えてさらに遺品を気にしつつ沢をくだった。
これがとても時間がかかることは、なんども経験してるので知っていた。

ただ、裏腹に、素晴らしいゴルジュや滝。
真夏に絶好の沢下りができるような、キャニオニング天国!


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、沢はやはり登るよりも降りるほうが、その区域を熟知していないかぎり危険。
せめて、登ることでその渓相がわかるってものだが、そこは効率を重視して情報に頼った。

今回は、決してホメられた登山ではないが、みずからやることで貴重な経験ができたことは大きい。
また、シチュエーションによる必要な技術がみえてきた。

併せて肝に銘じよう。
※安易には決してやらないでください

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